昆虫標本の作り方(スズメガ編)

作り方

概要

昆虫の標本を作ります。
ここではスズメガという種類のガを例に、標本の作り方を説明します。
作り方必要な道具所要時間が分かります。

!こんな方におすすめ
標本の作り方がわからない。
夏休みの自由研究趣味などで捕まえた虫を標本として残したい。

使用するもの

必要なもの

・昆虫
・昆虫針
・展翅板(自作可能)
・玉針(待ち針)
・展翅テープ(表面がつるつるして透ける紙)

あると便利なもの

・ピンセット(割りばし、竹串など)
・木工用ボンド(透明になる接着剤)、ガーゼ、ハサミ
・平均台

使用するもの

Pic.1 使用するもの

所要時間
・制作:1時間(慣れたらもっと早くなります)
・乾燥:1~2週間

作り方

1. 虫体をほぐす

標本を作るとき、虫の体が固まっていると、うまく形を整えられません
また、固まった体に無理な力をかけると、折れたりして虫体を傷つけてしまいます。
これを避けるために、ぬるま湯に虫の体を数分間つけて柔らかくします。
この作業を軟化(なんか)といいます。
(虫が死んで数日経過したくらいなら、この工程は飛ばしても問題ないことが多いです。)

軟化の方法

(1) 準備
まず、小さい容器にガーゼをしき、そこにぬるま湯をかけます。
その上に虫の胴体部分を乗せて、5分ほど待ちます。
このとき、容器にラップをして湿気が逃げないようにすると、さらに効果的です。
(2) 軟化したか確認する
時間がたったら虫を手に取り、羽の付け根や触角の関節がほぐれているかを確認します。
羽の付け根や触角を少し動かしてみて、動くようならOKです。
虫を容器から取り出し、キッチンペーパーなどで余分な水気を吸いとりましょう。
※ まだ軟化できていないときは…
虫体がまだ硬い時は、もう一度容器に戻してしばらく待ちましょう。
時間がたったら、再度(2)へ戻ります。

2. 虫に昆虫針を刺す

まずは昆虫の体に昆虫針を刺します。刺す場所は決まっていて、胸部の背中側の真ん中に刺します。向きは、背中側の真上から虫体と針が垂直になるように刺し、そのままおなか側まで貫通させます。

昆虫針の刺し方

Pic.2 昆虫針の刺し方(1)

針を刺す深さも決まっています。チョウやガの場合は、羽が展翅板に乗る高さまで刺します。

昆虫針の刺し方

Pic.3 昆虫針の刺し方(2)

3. 展翅板に取り付ける

チョウやガの標本を作るときは、展翅板(てんしばん)という器具を使います。
展翅板の両サイドには、板がついています。ここで羽の向きを整えます。
真ん中のミゾは、虫の胴体が入るスペースです。底にはウレタンフォームが敷いてあって、針を刺せるようになっています。

展翅板

Pic.4 展翅板

まずは、展翅テープを取り付けます。展翅台の先頭部分に玉針等で固定します。
展翅テープをピンと伸ばしときに外れてしまわないよう、しっかり取り付けます。
私は針を刺す部分を数回巻いて、破れにくくします。さらに両面テープで台に貼り付け、そこに針を刺して固定しています。
展翅テープには、水平方向に線が入ったものがあります。線があると羽の向きがわかりやすく、簡単にきれいに展翅できます
展翅テープがない場合は、つるつるして半透明な紙を代わりに使いましょう。身近な例だとクッキングシートが近いです。

展翅板の板幅よりも少し細く切り、展翅テープと同じ方法で取り付けます。

次に、1.で虫を刺した針を展翅板中央のミゾに刺します。
このとき、虫の体が前後・左右に傾かないように注意しましょう。
前後に傾いていると、羽を水平に整えられません。左右に傾いていても、羽を胴体に対して左右対称に整えられないため、きれいな標本が作れません。

展翅板に虫が取り付けられました。これで準備完了です。

取付状況

Pic.5 展翅板に取り付けた状態

4. 羽を整える

羽の向きを整えます。この作業を展翅(てんし)といいます。
チョウやガの標本を作るときに中心となる作業です。

(1) 羽を開く
羽を開き、展翅テープで羽を押さえます。
羽が閉じている場合は、針やピンセットを羽のすきまに入れ、左右に開きます。
羽が固くて左右対称に開かないときは、片方ずつ開いて、展翅テープを載せていきましょう。

展翅テープの下に羽を入れる

Pic.6 展翅テープの下に羽を開いた状態

(2) 右羽の位置を整える
まずは右羽の展翅から始めます。
針を使って上羽→下羽の順に、羽の位置を整えます。写真のように、針を羽にとおっている筋にひっかけて、すこしずつ上へずらしていきます。この筋を翅脈(しみゃく)といいます。

翅脈に針をひっかけて羽を整える

Pic.7 翅脈に針をひっかけて羽を整える

ずらす高さは「上羽の下側が、水平になるまで」が目安です。どのくらいまで持ち上げたらいいか分からないときは、図鑑の絵や写真を参考にしてください。

羽を持ちあげることができたら、羽から少しだけ離れた場所に玉針を刺します。展翅テープごと玉針で留めることで、展翅板とテープの間に羽を挟んで、固定することができます。
羽を動かすときは柄付き針があると、とても作業がしやすいです。
柄付き針を持っていなくても、細い針をシャーペンの芯の代わりにセットして、代用できます。

(3) 左羽の位置を整える
次に左羽を展翅します。
右利きの人は、展翅板ごと前後ろを反対に回転させ、さかさまの状態にします。こうすることで、左羽の展翅も利き手側でできます。

5. 触角を整える

触角の向きを整えます。
触角は、細くデリケートな器官です。無理な力がかかると、いとも簡単に折れてしまいます。
柄付き針やピンセットを使って、慎重に向きや開き具合を整えましょう。
慣れていない人や器用さに自信のない人には難しい作業だと思います。折ってしまいそうな時は、無理せずに次のステップへ進みましょう。
触角の位置を調節したら、元の形に戻らないように針や紙片を使って固定します。

触角を整える

Pic.8 触角を整える

展翅がおわりました。

展翅完了

Pic.9 展翅完了

6. 乾燥させる

羽と触角を整え終わったら、そのまま乾燥させます。
湿気がなくて、直射日光が当たらないところに置いて、乾燥するのを待ちましょう。
日陰で風通しがいい場所がベストですが、置き場所に困る場合は箱に乾燥剤と展翅板を一緒にいれて乾燥させる方法もあります。
乾燥時間の目安は、湿度や気温、虫の大きさにもよりますが2週間くらいで大丈夫です。時間に余裕のある方は、1か月程度乾燥さておいた方が無難です。
十分に乾燥させると、虫の体はカチコチに固まります。
この状態になれば、虫を展翅板から外しても大丈夫です。

7. 展翅板から取り外す

乾燥が終わったら、いよいよ展翅板から取り外します。
乾燥した虫体はカチコチに固まっているので、ちょっとの力で簡単に壊れてしまいます。慎重に取り扱いましょう。

まずは玉針や固定用の針をはずします。次に、展翅テープをはずします。このとき、テープの上に触角がある人は要注意です。触角は折れやすいうえ修復が大変なので、テープを横向きにスライドするなどして、慎重にテープを外しましょう。
最後に、昆虫針を持ち、標本を展翅板から引き抜きます。
おめでとう。完成した標本をいろんな角度から観察してみてみましょう。
羽の模様や色の変化、触角の形はどうなっていますか。写真のエビガラスズメは腹部にエビの殻のような模様がついています。体は毛深くて、モフモフしています。

 

Pic.10 標本を観察してみよう

8. 完成した標本を標本箱に保管する

完成した標本は、ラベルと一緒に標本箱に保管します。
ラベルには、採集場所・採集年月日・採集者必ず記載します。

ラベルの記載例

Fig.1 ラベルの記載例

名前(種名)は別のラベルに記載します。書かなくても大丈夫ですが、せっかく出会った虫なので名前を調べてみましょう。

ちなみに、種名を書かなくてもいい理由の一例として、虫の名前が変わることがあげられます。例えば、今まで同じだと思われていた種が、研究が進んだことで別種であると判明したケースなどが当てはまります。

ラベルは昆虫針に一緒に刺して管理します。こうして標本とラベルを一組にすることで、標本とラベルの組み合わせがばらばらになるのを防ぎます。
ラベルと虫がセットになってはじめて、学術的な意味を持った正式な標本の完成です。

9. メンテナンスをする

標本に異常がないか、定期的に状態を確認しましょう。
特に、標本箱に隙間があると、そこから標本を食べる虫が進入することがあります。大切な標本を害虫から守るために、標本箱に防虫剤も一緒に入れておきましょう。

防虫剤が減っているときは、新しいものに取り換えます。また、湿気にも注意が必要です。標本箱を開けるときは乾燥した日を選ぶといいです。

おわりに

今回はスズメガを例に、標本の作り方を説明しました。

展翅ができるようになると、チョウなどの標本も作ることができます。また、作りや出来上がった標本を観察することで、いろいろな発見があると思います。

興味を持たれた方は、ぜひやってみてください。

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